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緋葉の発した一言に、もう隠しきれないと観念したように一度目を伏せ、真っ直ぐに真尋を見つめた。
「真尋殿、私は貴方に隠していた事がある」
「隠していた事……?」
そして緋葉は真尋の高祖父が自分の主であると明かした。
その高祖父が人と子を成した事に身内に激怒され殺された事も。
「秋人様にお会いして初めて気付いたが、秋人様には口止めされていた故……」
正直に話すと真尋はマジかと溢す。
だが同時にどうして今その話しをするのだろうとも思った。
すると利音が何となく察してこう聞いた。
「で、その高祖父の名前がその…きさ…」
「貴眞様だ」
「え、待って……
じゃあさっきの人は俺の高祖父って事?」
そう、雲外鏡に一瞬映った人物は真尋の高祖父の貴眞だったのだ。
しかし何故高祖父の姿が映ったのか……?
「貴眞様のお力を有しておられるからか………?」
緋葉がそんな予想をするが、本当の所は分からない。
真尋はもう一度雲外鏡を覗き込んで見ると、再び翼が現れ、貴眞の姿になったかと思えばまた真尋の姿に戻る。
それの繰り返しだった。
もしかしたら雲外鏡でさえ、真尋の本当の姿を捉えられないのかもしれないと利音は考えた。
それだけ真尋の存在はあやふやで、定まっていないように思えた。
後日緋葉は秋人の元へ向かった。
烏の姿で秋人の家のベランダへ降り立つと、秋人の姿を確認して窓とトントンと嘴でつついて中に入れてもらった。
「どうした?」
事情を知らない秋人は何か大変な事が起こったのではと不安になるが、緋葉の様子からそれ程切羽詰まったように思えなかったので少しホッとした。
そして緋葉は雲外鏡の話しをした。
「そうか、そんなことが……」
「申し訳ありません。
つい口を滑らせてしまい」
「いや、いずれ話さなければならなかったんだ。
しかし、雲外鏡は真尋に父上を感じ取ったとは………」
雲外鏡について詳しい訳じゃない。
しかし、真尋の裏側に潜むものは秋人の父である貴眞と言う事実に、何か不穏な空気を感じた。
「私も覚悟を決めなければな」
「秋人様……?」
真尋と言う存在が今後どんな結果をもたらすのか、慎重に見極めなければならない。
彼を守るために………
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