レールから外れた人生(下)

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 家の中も外観と違わず広い。  広々とした廊下を利音と利音の母、千鶴の後ろを歩きながらキョロキョロと見てしまう。  普段普通の民家に住んでいる利音がここで暮らしていたなどとはとても思えない。 「こちらへどうぞ」 「は、はい……」  千鶴に通された部屋は和風な建物とは違って洋風だった。  中央に白いテーブルとソファーがあり、壁には洋風の風景画が飾られている。  ソファーにゆっくりと浅めに座る真尋に対して、利音は隣にどかっと脚を組んで座る。 「今お茶をお持ちします」 「あ、俺にもお茶頂戴」  先程出迎えに来た家政婦のような女性が真尋に言うと、横から自分にもと利音が催促する。  そんな息子を見た千鶴は向かいのソファーに座り、ため息をつく。 「お客様がいらっしゃる前で見苦しい」 「真尋はうちのバイトだし」 「そう言う問題ではありません」  口ごたえする利音に相変わらずだと千鶴は呆れ果てる。 「ごめんなさいね真尋さん。 この子に付き合うのは大変でしょう?」 「え、いえ……そんなことは………」  ここで利音の悪口は言えず板挟み状態。  やはり着いてくるんじゃ無かったと後悔する。  そんな会話をしているとお茶とケーキが運ばれてきて、早速頂く。 「美味しい」 「そう、良かったわ」  微笑む千鶴を見て、若々しくて美人だよなぁと思う。 「お姉さんじゃないんだ……」  ついそんな事を口走ってしまうと利音がそれに反応した。 「誰が?母さんが? ババアなのに?」 「誰がババアですって?」  利音の母親への悪口にヒヤヒヤの真尋。  一言一言が地雷になりそうで迂闊に喋れない。  するとずっと烏姿で真尋の肩に止まっていた緋葉が口を挟む。 「利音殿、お言葉だが、親に向かってその様な口の聞き方は如何かと。 見目麗しい母君ではないか」  緋葉がただの烏ではないと当然のように分かっていたのか、千鶴は喋る烏には驚かないが、少し目を丸くして口元に手をやる。 「まぁ、嬉しい事を仰る。 息子よりも妖の御仁の方がお優しいなんて…… その姿は本当の姿?」 「いえ、私は烏天狗にございます」 「そう、なら元のお姿に戻っても宜しいのよ」  どうせこの家の式神もその姿のまま、連れ歩く事が多いからと千鶴は言うので、緋葉は元の烏天狗の姿に戻った。
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