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元の姿に戻った緋葉。
2メートル近くあるその大きさにも千鶴は動じることもなく、今度は真尋へ質問をする。
「この方は真尋さんの眷属かしら?」
「い、いえ……眷属と言う訳じゃ……」
真尋を天狗の混血と見抜いてか、そんな事を聞いてくるが、どう答えていいか分からずに口ごもると緋葉が代わりに答える。
「私はお二方に助けて頂いた。
故に慕い、お側に置いて頂いているだけだ」
あくまでも真尋、利音二人の手助けがしたいだけだと説明した。
「そう……
誠実な方のようで安心だわ」
千鶴はそう言ったが、心の底からそう思っているかと言われたらどうだろうか?
妖についてはこの界隈に居るのでよ~く理解している。
嘘つきで、例え妖同士の仲間であっても裏切るし、人に従っている式神でも隙あらば主を喰らおうとしてくる。
なので緋葉の事もそう簡単に信用はしないだろうと利音は考える。
本音と建前を上手く使う。
それが母、千鶴と言う女だ。
「じゃあ、顔出したし俺たちもう帰るわ」
さっさと帰りたいと利音は立ち上がるが、千鶴に制止される。
「何を言っているの?
お父さん、数時間で帰ってきますので。
利音さん、勝手に帰らないように」
「…………」
どうやら父に会うまで帰してくれないらしい。
「まぁ、いいや。
俺の部屋まだあるよね?
それまで勝手にしてるから」
「ええ」
利音は久々に自分の部屋へ、真尋と緋葉を連れて戻る事にした。
この部屋は客間で、真尋がいたのでここへ来たが、普段はこの部屋は使わない。
部屋を出て廊下に出ると、そこには佐倉が待機していた。
利音らが車から降りた後、車庫に車を戻し暫く事務作業をしていたが、そろそろ利音が客間から出てくるだろうとタイミングを見計らって廊下に立っていた。
「何?俺の見張り?」
「いいえ、何かご要望があればと伺いに来ただけです」
「あっそ。
別に何もないから仕事に戻っていいよ」
「左様ですか。
ではまた何かございましたらお呼び下さい」
そう言って佐倉は仕事に戻った。
二人のやり取りを見て、ご主人様と執事のようだと真尋は思う。
改めて利音の家はとんでもない名家なのだなぁと実感する。
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