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利音と廊下を歩いていると、一人の男性に出くわす。
そしてその後ろには笠を被って、顔や手は包帯がグルグルに巻かれている小柄な人のような妖がいた。
男性の式神だろうかと推測する。
「利音じゃないか。
本当に帰ってきたのか」
「叔父さんいたの。
叔母さんと誠は?」
「今日は二人共出てる」
「そう………」
40〜50代くらいの白髪交じりの男性。
彼は利音の父の弟で利音にとっては叔父である。
しっかりした体つきの叔父だが、目元が兄の麟太郎と違い優しげではある。
「そちらが佐倉の言っていたバイトの子と烏天狗か」
「あ、はい。
高住真尋です」
「そうか。私は彼の叔父の宗像光次郎です。
以後、お見知り置きを」
そう言ってさっさと行ってしまった。
笠を被った妖も、一切こちらを見ぬまま光次郎の後ろを着いて行く。
千鶴の言っていた通り、式神も主と共にこの家を出歩いている。
そんな彼らを見送った利音は一つふぅっと息を吐いた。
叔父と甥と言えど、そこまで親しいかと聞かれたらはいとは言えない。
しかし全く情が無いわけでもない。
本家と分家と言う上下関係が何となく叔父の方にあるような気がする。
真尋も叔父にしては少々よそよそしさを感じていた。
それに一つ気になっていることもある。
「あの、利音さんのお母さんって利音の事さん付けで呼びますよね」
千鶴は利音の事を利音さんと呼んでいた事を思い出した。
自分の子をさん付けで呼ぶ人をを初めて見たので、奇妙に感じた。
「ああ、母さんはそうだね。
ま、珍しいかも……」
利音にとっては当たり前だが、利音自身も周りにそんな母親は見たことがないので、自分の母が特殊なのだと理解している。
そして利音の部屋に着いた。
部屋に入ると、そこは広々としているが、何とも殺風景だ。
ベッドにローテーブル、本棚などあるが、棚にはほとんど物は無く、必要最低限しか物がない。
その理由も、利音は家を出る時骨董も含め大体を持って出たからと話す。
「てかこの家広いですよね。
叔父さんとか親戚の人も住んでるんですか?」
「いや、叔父家族はここの本宅じゃなくて、この隣の別宅に住んでる。
後叔母家族もその隣とか」
宗像家は同じ敷地内に叔父家族、叔母家族などの分家も別宅を建てて住んでるので、よく本宅に親戚が訪れるとのことだ。
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