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そんな規格外の宗像家の話しを聞いて、自分がいる世界とは全く別の世界だなと真尋は思った。
利音の部屋で寛いだ後は、広く綺麗な庭に出たりして利音に家の案内をされたりした。
庭に出ているとそこに一人の壮年の男性がやって来た。
短髪で三白眼のその男性を見て、利音の眉間に皺が寄る。
「野々村………」
「お久しゅう。
まさかお帰りになられるとは思いませんでしたよ。
そちらの高住さんも宜しゅう……
私、宗像家に仕える野々村啓治言います」
「あ、はい……どうも……」
にっこりと微笑む野々村と言う男は関西なまりの言葉を喋る。
丁寧で上品な喋り方だが、妙に胡散臭く感じてしまう。
それに何だか妙な気配がするのは気のせいだろうか………?
すると利音が少しイラ立った様子で野々村に話し掛ける。
「どうせアンタだろ?
俺をコソコソ嗅ぎ回って監視してたの」
「ははっ、そう怒らんとって下さい。
これが僕の仕事や言うのは知ってはりますやろ?」
野々村は宗像家の為、或いは当主の麟太郎への強い忠誠心の元、秘密裏に行動し、時に汚れ仕事も請け負う。
その活躍は皆一目を置く程だ。
「全部宗像家の為です」
そして野々村の目線は利音から真尋へと移る。
「せやから利音さんに近いもんは、悪い思いながらも調べさせて貰いました」
そう言って野々村は真尋の目の前まで近付いてきた。
「高住真尋。随分面白い生い立ちやな。
ひいお祖父さんも我々と同業。
君は天明道に入らへんの?」
「………っ!!」
ドキリと心臓が跳ねた。
秋人の事も、真尋の生い立ちも知っている事に畏れを抱く。
何故知っているのか、一体何処まで知っているのか………
野々村は笑みを浮かべているが、底が見えず恐ろしいと冷や汗が額から吹き出す。
「ふふっ、そんな殺気を向けんでも、どうもせんて。
利音さんの大事な従業員を奪ってもうたら、僕の立場が無くなるしなぁ」
野々村の視線の先を見ると、緋葉が殺気を含んだ目で彼を睨んでいた。
「緋葉………」
「主想いのええ眷属やなぁ」
今にも襲い掛かってしまいそうな緋葉を前に、野々村は動じる所か余裕の笑みさえ見せる。
こんな人が宗像家に仕えていると言うのが、宗像家とはもしかしたら思っているよりも恐いものではないかと真尋は思い始めた。
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