レールから外れた人生(下)

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 不穏な雰囲気が流れる中、利音が真尋から話しを反らそうとするかのように話題を変える。 「そんだけ知ってるなら、本部の秘密の隠し部屋について知ってんじゃない?」 「本部……?」  雲外鏡の件で利音は初めて本部へと足を踏み入れた。  そこでは各地から寄せられる妖の情報処理、及び天明道の会員に調査や妖退治の指示を送り、他には対妖用の武器や術の開発なども行っている。  その際、妖を用いて実験も行っている事を利音は知っていた。  そして利音が大好きな曰く付きの品々の調査や後始末も本部で行っている。  その後始末に利音は呼ばれたのだ。  その時本部の奥に、まるで別の世界に繋がっているようにそこから先が突然和風の内装になっているのに気が付いた。  厳重に結界が張っているそこは異様だった。  そこに関係者以外立ち入り禁止とロープが張ってある。 「ねぇ、あっちって何?」  気になった利音は本部の案内人の女性に聞いてみた。 「ああ、あっちは上層部の方達の会議場がある場所だから貴方には関係無い場所よ」  女性はクールに淡々と答えた。  しかし利音はどうもそこが気になって仕方がなかった。 「野々村知ってんじゃない? 真尋の事をそれだけ調べたんならさ。 本当にただの会議場?」  そう煽るように聞くと、野々村は肩を竦めクスリと笑った。 「相変わらず好奇心旺盛なお方や……… まぁ確かにあそこを調べた事はありますよ」  本部の誰も触れないあの場所は、利音では無くとも誰もが気になっている場所だ。  しかし本部の者は皆口を噤む。  決して聞いてはならぬと……… 「調べてはみたんですが、何も分からへんのですよ。 入ろうにも、部外者が入れば最悪死ぬ呪いを施してある」  密偵の仕事なら右に出るものはいないと言う野々村でさえその"ただの会議場"に入ることすら適わないのは明らかにおかしい。 「入るんは無理でしたが、面白い話しは掴めましたよ」 「どんな?」  利音がそう聞くと、野々村はニッと口角を上げた。 「あそこの奥に秘密の部屋があって、そこには天明道の創始者が居られるとか何とか」 「創始者?」  天明道が創設された時期の正確な年代は分からないが、少なくとも室町時代には存在していた筈だ。  普通ならば創始者が生きている筈がない。   「まさか、創始者が人じゃないとか?」  利音の言葉に野々村は不適に笑う。  
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