レールから外れた人生(下)

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 それ程危険な犬神を利音は調伏し、自分の駒として使っている。  それに今は良いとしても、彼に子が出来れば、その子にも危険が及ぶ。 「ワンコやからって愛情注げば忠犬になると思うたら大間違いや」  野々村がそう言うと真尋はこう反論する。 「ネコはワンコじゃ無いです。 ニホンオオカミです」 「……………は?ネコ? と言うかオオカミ?」  真尋の天然発言に得体の知れないと言われる野々村も流石に混乱する。  普段飄々としている野々村が真尋に戸惑いを見せることに利音はつい笑ってしまう。  笑った………  あまりこんな笑顔を見せない利音が笑った事に野々村は驚いた。  彼でもこんな風に笑うのかと………    数奇な生い立ちと言う以外でも、真尋は興味深い存在であると思った。 「え~っと、ニホンオオカミ言うんは?」  真尋に聞いてもよく分からないので利音に訊ねる。 「秋人さん、真尋のひいお祖父さんがニホンオオカミに見えるって言ったから」 「ああ、成る程……… へぇ~これがニホンオオカミ。 初めて見たわ。 いや、そう言う問題やあらへんか……」  野々村はしゃがんでネコをじっくり見ながらブツブツと独り言を喋っていた。  その時、佐倉がやって来た。 「野々村さん、ここにいらしたのですか。 仕事の事でお話しがあるのですが……」  利音達とお取り込み中かと思い、また後にしようと思い立ち去ろうとしたが、しゃがみ込んでネコを見ていた野々村が立ち上がった。 「いや、大丈夫や。 では利音さんまた…… 真尋君も……真尋君って呼んでええ?」 「ああはい、どうぞ……」 「ありがと、ほなまたな真尋君。 行こうか、佐倉」  野々村は真尋にひらひらと手を振って、利音には軽くお辞儀をして去り、佐倉も丁寧にお辞儀をして野々村の後に続いて去っていった。  真尋は野々村の妙な気配がどうも気になり、彼の後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。  その後は利音達は庭を見て回る。  すると利音は倉庫が無いと呟いた。 「倉庫?」 「俺の趣味を保管してた倉庫。 跡形も無くなってる………」  どうやら利音の曰く付きの骨董を保管に使っていた倉庫は取り壊されてしまったようで、不満そうに顔を顰めた。
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