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自分がいない間に勝手な事をしないで欲しいと思う反面、考えてみれば自分から啖呵切って出て行ったのに、勝手なのは自分の方ではと、悶々とする。
その悶々とした心を抱えながら部屋に戻り、父の帰りを待つ。
それから暫くして佐倉が父、麟太郎が帰ったと伝えに来て、利音は嫌々重い腰を上げた。
リビングへ行くと、そこにはソファーに深く腰掛ける彼は威厳たっぷりの麟太郎がいて、真尋は厳しそうな人だと緊張で背筋が伸びる。
「よくもまぁ家の敷居を跨げたものだ」
麟太郎は利音を見ようともせずにそう言った。
利音に対しては相当お冠のようだ。
「あなた、お客様もいらっしゃるのだからみっともない事はよして下さいな」
千鶴が麟太郎へそう苦言を呈する。
麟太郎はフンと鼻息を鳴らし、千鶴は真尋にごめんなさいねと、麟太郎の座るソファーから少し離れた椅子への着席を促した。
利音は座って早々話しを切り出す。
「俺、戻る気は無いから。
家を継ぐつもりは無い」
「…………」
家を継がないと言う宣言に麟太郎の顔が厳しくなる。
利音には兄弟がいない。
従兄弟はいるが、彼らが当主に相応しいかと言えば皆反対するだろうし、本人達が嫌がっていると聞く。
今の若い世代は人の上に立ちたがらない者が多い。
なので次の世代をどうするかと宗像家は揉めているのだ。
「はぁ………全く、我が儘ばかり大概にしろ!!」
「大体、庭の倉庫取り壊しといて帰って来いって方がふざけてる」
利音は倉庫を取り壊したのは帰ってくるなと言う意味だろうと反論した。
「よく言う。
そもそも庭を吹っ飛ばしたのは誰だ!?」
「…………さぁ?」
麟太郎が語気を強めそう言うと、利音はなんの事かととぼけるように首を捻る。
「庭を吹っ飛ばした?」
会話の内容が分からない真尋は佐倉に聞くと、事情を説明してくれた。
「利音さんが家を出られる前、倉庫は利音さんが曰く付きの品々を保管し、そこに結界を張っていました」
先程倉庫の説明を受けたし、宗像家骨董店にも同じように蔵に結界を張っているのでイメージ出来る。
「その中から一つ、妖が封じられていた木箱の封を解いたんです」
好奇心旺盛な利音は木箱に封じられた妖が何なのかを見てみたくなって、その封印を倉庫から出して解いたら体長が20メートル以上はありそうな巨大な百足が出てきて、庭と家の一部を破壊してしまったのだ。
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