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「君の事を佐倉と野々村から聞いて、直接話してみたいと思った」
佐倉や野々村から聞いて真尋に興味を持った麟太郎。
10歳まで視ることすら出来なかったとは思えない程、彼からは大きな妖気を感じていて、利音で無くとも興味を抱くと感じた。
「君は将来はどうするつもりかね?」
「えっと、特にまだ何も……」
正直今の段階で何をしたいとか思い付かないが、どうしてそんな事を聞くのだろうと疑問を抱く。
「天明道へ入るとなれば、本部は君を解剖したいと考えるかもな」
「はい?か、解剖……?」
突然物騒なワードが出てきて困惑を隠せない。
何故解剖されるのだろうか?
「恐ろしい話だがな、本部には妖より厄介な科学者がいることは事実。
先祖に妖がいる者が先祖返りで強力な力を持つことが出来るのなら、欲しいだろうな」
真尋のように、霊力さえ全く無い者を覚醒させる事が出来るなら、人手不足のこの業界には喉から手が出る程欲しい素材である。
一体どうやって覚醒したのか非常に興味深く、同じように覚醒出来ないか真尋を隅々まで調べ上げたいだろう。
「奴らは探究心の強い輩でもある。
まぁしかし、君の曽祖父の後ろには朱兼がいるからそう簡単には手を出せぬとは思うが………」
「朱兼………あの大蛇の人?」
真尋は先日初めて相見えた朱兼を思い出す。
強大な力を有する朱兼が子同然の秋人のひ孫に手を出され、黙っているかと麟太郎は考える。
「君の存在は天明道にとって重要なものとなろうな。
それで、君はどうしたい?
どの道、天明道にしか居場所は無いように思うが」
そう聞かれ、言葉に詰まる。
自分の将来を考えたことはあるが、天明道に入ると言う選択肢を考えて来なかった。
それはこのまま人として生きていきたいと思っていたから。
だが、段々と人から遠ざかって行く自分に、それは無理なのだと現実を突き付けられていった。
それに妖とも触れる機会が増え、色んな事を考えさせられた。
「俺は、ずっと自分から目を背けて来ました。
ただの人でありたいので………
でも多分利音さんのお父さんが言う通り、天明道に入るしか居場所が無くなるかもしれないですけど………」
本当にそれでいいのか………
真尋は迷っていた。
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