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「俺は妖も好きです。
緋葉みたいに悪い妖ばかりじゃないです」
「真尋殿………」
真尋の言葉に緋葉が反応する。
天明道に入れば否が応にも妖と対峙しなければならない。
例え妖にどのような事情があろうとも。
それは以前人の行いによって弱って、人に復讐をしたいと言った古椿の霊の件で思い知った。
利音は当然のように祓った。
それは天明道にいた経験から培った判断だろう。
今ならそれが正しい判断だと理解出来る。
あの時はそれしか方法がなかったのだ。
それでも言えることは、妖が全て悪では無いって事だ。
「君は妖側に立つと言うことか?」
「違います。
俺は妖にも分かり合えるのがいるって思うだけで、俺はあくまで人なので」
自分が人であると考えていることは変わらない。
「人間でもいい人がいればクズな人もいるわけで、それは妖もそうでしょう?」
「妖を信用すると痛い目に合うぞ。
その烏天狗も人の血が流れる君を裏切るかもしれんぞ?
天狗は人間嫌いだからな」
真尋の隣にいる緋葉を見てそう言った。
当然緋葉は絶対に真尋を裏切るような事はしないと断言するが、口では何とでも言えると反論した。
「俺は緋葉を信用してます。
それに、信用してないと人と妖の混血も存在してないと思うんですよ。
まぁ中には騙されてとか無理矢理ってのもあるかもしれないですけど………
でも少なくとも俺の曾祖父は高祖父を優しい人だったって言ってましたし」
あまり多くを語らない秋人だが、自分の父の事を優しい人だと、懐かしむような笑みで言っていたのを覚えている。
あの表情は嘘を語っているのでは無く本心で語っている表情だった。
人と妖でもそうやって愛を深める事も出来るのだと信じている。
「俺はあくまで緋葉みたいな妖とは友人でありたいかなぁと」
要は信頼出来る人間と妖で上手く折り合いを着けてやって行くのが一番だと思っている。
だから必ずしも天明道に入る必要も無いのではと麟太郎に伝えるが、彼はまた違った理由で入るべきだと言った。
「君の曾祖父や朱兼を見れば分かるだろうが、歳を取らない。
そう言った者は人の世で生きる事は出来ん。
だからこそ天明道に身を置き、人の世でも上手く対処出来る道を提供してもらうのだ」
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