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「天明道に所属していれば、不老長寿の混血の者には身分証なども提供してくれる。
この組織は政府や警察とも繋がっているからな。
特に政治家は恨みを買いやすい」
医者ですらお手上げの体の不調。
原因が呪いや生き霊と言った怨念が絡んでくれば、祓い屋の出番である。
それに人知が及ばぬ現象を祓い屋が鎮めれば、彼らは天明道を無視できない。
それと先々を占い、より良い選択肢を教えると言った事も行っている。
そうして恩を売れば色々と融通が利く。
Win-Winの関係と言えよう。
「それに、これでも天明道は妖と全面戦争にはならぬよう何とか均衡を保つよう努めている」
流石に無闇矢鱈と妖を狩っていては余計に妖を刺激し、人が狙われるようになってしまう。
だからこそ現在のような依頼を受けて現地へ向かい調査し、事件解決する体系となったのだ。
「つまり、君が天明道に入らぬ理由は無い。
解剖されるのが不安ならうちに来ればいい。
後ろ楯となろう」
「え?」
「宗像家に迎え入れても良いと言っている」
佐倉や野々村のように宗像家で働かないかと誘われた。
「えと、あの……なんで俺を………?」
いくら利音と一緒にいるからと言って、それを理由に宗像家に誘ったようには思えない。
何か彼に思惑があるのだろうか?
「別に大層な理由があるわけではない。
ただ、本部や朱兼に奪われるのは惜しいと思っただけだ」
大層な理由は無いと言うが、何故彼らに奪われたくないと思うのかが謎だ。
深く追及したいが、利音の父相手にあまり聞くのは失礼なのではと考えてしまう。
すると代わりに千鶴が口を開いた。
「あなた、回りくどい言い方をなさらずに、真尋さんを気に入ったとおっしゃればいいのに」
「お前、何を言うか!!
余計なことを………」
千鶴の言葉に狼狽えながら怒る。
図星のようだ。
「ふふっ、真尋さんの素直で真っ直ぐな受け答えに好感を持ったのよ。
利音さんは可愛げの無い子ですから、真尋さんみたいないい子で、将来有望な子を引き入れたいのよ」
そう上品に笑って言う。
しかし真尋は自分を将来有望などと微塵も思ってないし、宗像家へ入るなど考えられないと言うか、利音が何と言うか分からないので返答に困る。
すると麟太郎が真尋の困った顔を見てすかさずこう返す。
「今すぐとは言わん。
君もまだ学生だ。
ゆっくり考えるといい」
「はい………」
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