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少し沈黙が流れたあと、佐倉が利音に質問を投げ掛ける。
「本当に宗像家を継がないおつもりですか?」
「継がない。
大体今時世襲なんて時代遅れでしょ。
実力主義でやって行くのが一番いい。
でないとどち道家は潰れる」
確かに今の時代、少子化で子を持たない者が増えた。
そうなればいずれ血が途切れてしまう可能性がある。
ならば養子でもいいから実力のある者を当主にするべきだと利音は言う。
「その原理で言うと貴方が当主に相応しいのでは?
実力で言えば貴方以上に誰がいますか?」
「お前も野々村もいるじゃん」
「私は貴方程の才能はありませんし、野々村さんは陰で生きる人です。
それにあの人もう四十過ぎですよ。
次世代で言うと貴方しかいないと思いますが?」
実力でも利音が一番有力なのだが、本人は嫌だと言い張る。
「俺は人の上に立つタイプじゃ無いし」
「え~そうですか?
俺と緋葉を結構コキ使ってるじゃないですか。
人の上で命令するの向いてますよ?」
横で聞いていた真尋が口を挟んできた。
曲がりなりにも経営者なのだから人の上に立つのは向いていると真尋は思う。
「部外者の君は黙ってて!!
て言うか人の言うことあんま聞かないくせによく言うよ!!」
普段よく仕事をサボって居間でぐぅたらしてる真尋の方が人を使うのが上手いのではと利音は思っている。
普通雇い主の目の前でそんな事をしてればクビになって家を追い出されるとは思わないのだろうか?
肝が据わってる分、そう言う事に長けている気がする。
そんなやり取りを見て佐倉は仲が大変宜しいのですねなんて言ってきた。
「「別に良くない(です)」」
二人仲良く言葉が揃って互いが顔を見合わせる。
これを仲が良いと言わずになんと言うのか。
佐倉は最初何故真尋を家に住まわせてまで雇っているのか不思議だった。
利音も最初はただ興味本意だけだっただろうが、何だかんだ言いつつ、真尋といるのが楽しいのではないかと佐倉は思う。
宗像骨董店に到着し、利音達は車から降りる。
利音はじゃあと佐倉に手を振ってさっさと家に入ってしまったが、真尋は佐倉にありがとうございましたとお辞儀してから帰ろうとすると、佐倉が呼び止める。
「利音さんを宜しくお願いします」
そう頭を下げてすぐに車を発車させて行ってしまった。
その様子を真尋は車が見えなくなった後も暫く見つめていた。
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