墓地の陰気

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 墓に手を合わせ、心の中で色々な報告や感謝の気持ちを伝える。  だが、どうも周りで違和感を覚える。 「…………ねぇ、秋人さん」 「……ああ、真尋も感じるか?」 「秋人さんも分かる?」  どうやら違和感を持ったのは真尋だけではなかったようだ。  周りを見渡してみると、鬱蒼とした木々の隙間から二つの光が見えた。  そしてその二つの光は上へ舞い上がったかと思えば、大きな翼が現れ、鋭い嘴と足の爪が露になる。  二つの光の正体。  それは大きな鳥の目が太陽の光に反射した物だった。    鳥と言ってもただの鳥ではない。  見た目は鶴や(サギ)のような形で、灰色の巨鳥である。  そして何より妖気を放っている事で妖であると分かる。  その鳥の妖はキェェェとけたたましい鳴き声を響かせながら、真尋達へ一直線に襲い掛かる。  低空飛行して鋭い足の爪を光らせて真尋達を捕らえようとしてくるのを避けて、真尋と秋人は漆黒の翼を羽ばたかせて空へ移動する。 「あれ何?」   「分からない……… しかし、墓場に現れるとしたら……」  秋人は怪鳥の正体を冷静に分析しようとするが、そんな余裕は与えてくれず、また襲ってくる。 「焼き払え 炎舞!!」  真尋は襲ってくる怪鳥に炎を浴びせる。  怪鳥は炎を避けようとしたが、大きな翼を掠めて悲鳴を上げる。 「………っ!?」  その様子を見ていた秋人は真尋の変化に気が付く。  炎の纏った妖力がより攻撃を増長させた事で怪鳥にダメージを負わせた。  真尋にそのやり方を教えてなかった筈なのに一体いつの間に覚えたと驚きを隠せない。  朱兼が以前言っていた、利音に色々仕込まれたのではと言う予想は的中していたのだろうか。    真尋は間髪入れずに錫杖に妖力を乗せて怪鳥の頭を目掛けて攻撃を仕掛ける。  怪鳥は体を捻り頭への攻撃は免れたものの背中を強打され、地面へ叩き付けられる。 「……………」  我がひ孫はこんなにも強くなっていたのか………  秋人は真尋の成長に目を見張る。  それでも今は感慨にふけっている場合ではない。 「真尋、あの鳥を少しの間任せる。 私は人がここへ立ち入れぬよう入り口に結界を張る」 「分かった」  万が一人がここへやって来ては大変と、秋人は墓へ続く道に一時的に結界を張る事にした。  これが出来るのも真尋があの怪鳥と渡り合えるくらい強くなってくれたお陰だ。
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