墓地の陰気

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 秋人は人差し指と中指を立てて印を結び人がここへ来れないように結界を張った。  その間怪鳥と空中戦で対峙する真尋は苦戦していた。  翼に真尋の攻撃を受けた事で、もう一段階ギアを上げたようにスピードも早くなり、動きも不規則で捉えにくい。  動作が大きく遠距離戦の真尋の技では接近戦で攻撃してくる怪鳥に対応するのは中々に難しい。  なので戦い方を変えて、相手をギリギリまで引き付けて、刃のように尖った石を空中から降らせる斬石を真上から落とし、その上錫杖を振るう。  捕らえたかと思った瞬間、巨大なその鳥は消えた。 「なっ………」  いや、消えたのではない。  まだここにいる……… 「目玉……寄越せ!!」 「………っ!?」  怪鳥は姿を人間の少年へ変化させ、小さくなることで攻撃を躱して、逆に真尋の懐へと入り込む。  油断した。  まさかあの大きな鳥の姿から人へと姿を変えるとは思わなかった。  鋭い手の爪を真尋の目を目掛けて伸ばしてくる。  殺られると思ったその瞬間__ 「焼き払え 炎舞!!」 「………っ!?」  下から秋人が攻撃を仕掛け、人へと姿を変えた怪鳥は身を躱し真尋から離れ、間一髪で助かった。 「大丈夫か?」 「うん、ありがとう秋人さん……」  成長したと言っても、まだまだ経験値が足りない。  今のように予測出来ない相手の行動に咄嗟に反応出来なかった。  一瞬の判断が命取りになってしまう。  一旦地面に降りて、秋人の隣に避難した真尋。  少年の姿をした怪鳥も地面に降りて来た。  その姿は真尋よりも3~4歳くらい幼いように見える。 「………人の姿になる鳥。 しかも目玉を狙ってきた」  真尋に目玉を寄越せと叫んだのを聞いて秋人はピンと来た。 「羅刹鳥(らせつちょう)か?」  秋人のその言葉を聞いて怪鳥はニタァと笑った。 「羅刹鳥?」  初めて聞いた真尋は秋人を見る。 「ああ、墓場に陰気が長期間溜まるとそれが羅刹鳥へ変化すると聞いている。 そして時に人の姿を取り、人の目玉を好んで喰らうとも……」  ここは墓場なのと、鳥の姿、人の姿への変化、そして目玉を欲しがっていた様子が羅刹鳥との特徴とよく似ていたので、秋人はこの妖を羅刹鳥と判断した。
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