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羅刹鳥かと問われたその妖は、不気味に笑みを浮かべ、だったら何?と自分が羅刹鳥であると肯定した。
ここの墓地には毎年来ていたが、陰気が溜まっていたことには気付かなかった。
それ程長年溜まっていたものなのに何故気付かなかったと秋人は自分を情けなく思う。
すると背後に何か気配を感じ振り向くと、羅刹鳥と似た黒い怪鳥がもう一羽現れ、襲ってくる。
二人とも間一髪で躱すが、そこを羅刹鳥が再び鳥の姿に戻り、真尋の上から鋭い爪を振り下ろしてくる。
転がるように避けると、羅刹鳥の爪が地面へめり込み、大きな傷跡を作る。
あの爪に捕まったら一溜りもない。
そして二羽が地面に横並びになる。
最初の一羽は灰色で、後から現れたのは黒色だ。
オスとメスで色や形が違う鳥がいるように、羅刹鳥もオスメスの番いだろうかと予測する。
「真尋、山の中へ………
鳥の姿では大きすぎて動けないだろうから、多少は有利に働くかもしれない」
大きな鶴のような姿では木々が生い茂る場所では翼を広げる事は出来ないだろうから、人の姿の羅刹鳥と戦う事になるだろうと秋人は考える。
真尋の場合いきなり姿を変えられてしまうと咄嗟に判断が出来なくなるかもしれないので、相手同様空中を舞う事が不可能になってしまうが、まだ戦えるだろうと思った。
そして秋人と真尋は木々の中へ逃げ込み、二羽の羅刹鳥が追ってくるのを待つ。
予想通り、灰色の羅刹鳥は再び少年の姿で追ってくるが、もう一羽は追ってこない。
人の悲鳴に近いような鳴き声で空を舞い、木を薙ぎ倒して真尋達を下敷きにしようとしてくる。
「なっ………」
予想外の力業に予定を変更し、秋人も力業で応戦する。
「妖火斬石」
妖力を帯びた無数の火を纏った鋭く尖った石を空中から浴びせる。
黒い羅刹鳥のその巨体では避けきれず、命中し、悲鳴を上げる。
そして地上へ叩き付けられる。
するとその羅刹鳥は秋人に敵わないと悟ったのか、なんと、逃げていった。
「なっ……逃げた!?」
追ってトドメを刺すべきかと悩んだが、真尋を置いて行くのは不安だった為、この場は深追いしないことにした。
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