316人が本棚に入れています
本棚に追加
/381ページ
もう一羽の羅刹鳥と戦う真尋の元へ向かおうと踵を返そうとして、何かに気付いて止めた。
秋人の視線の先に不審な物が見えて、慎重にそちらへ向かうととんでもない物が目に飛び込んできた。
一方真尋は、灰色の羅刹鳥と戦っていた。
木を利用し、相手を観察しながら死角から攻撃を仕掛けるなど、臨機応変に戦い方を変える。
「目玉、寄越せよ!!」
この羅刹鳥は血の気が多いようで、真尋の目玉を執拗に狙ってくる。
すると春日家の墓がある場所から、少し離れた木々の鬱蒼とした奥に開けた場所があると思えば、そこにポツンと1基の墓だけが寂しく立っていた。
そしてそのすぐ近くに秋人の姿があり、傍には人らしきものが二人倒れている。
「あれは……」
倒れているものの正体が気になったが、今は羅刹鳥の相手で精一杯。
開けた所へやって来ると、羅刹鳥は大きな鳥の姿で上から鋭い爪を剥き出しにして襲ってくる。
真尋は羽団扇を出し、それに妖力を纏わせ、刃物のように鋭くなったそれで羅刹鳥目掛けて振るう。
「………っ!!」
羅刹鳥の胸は羽団扇によって傷を作り、地面に倒れる。
しかしまだ羅刹鳥は死なない。
人の姿になると頭と目を動かして何かを探す仕草をする。
「アイツどこ行った?」
アイツとは誰の事かと真尋は一瞬考えた後、もう一羽の羅刹鳥がいない事に気付く。
確か秋人が相手をしていたように思うが、目の前の相手に手一杯で見ていなかった。
「お前の仲間なら逃げたぞ」
秋人がそう低音を響かせた。
その声は怒気を含んでいるかのようで真尋は身震いた。
しかし羅刹鳥は秋人の静かな怒りに気付いていないようで舌打ちをした。
「あ~やっぱダメだな。
アレは気弱で情けない」
不満気な羅刹鳥。
すると妖力を纏った錫杖を手にした秋人が羅刹鳥へ飛び掛かり、羅刹鳥は錫杖を妖力を纏った腕で受け止める。
「お前、人を殺して目玉を喰ったな!?」
秋人が見付けたのは人の遺体が二体。
しかも二人とも両目がくり貫かれた凄惨な遺体で、いつからそこにあったのか、少し腐敗していた。
「ああ……アレね………
あんた達のいた墓の方からこっちにも墓あるって気付いた若い男女が来たから喰ったんだよ。
やっぱ目玉は美味い。
あんたらの目玉はもっと美味そうだ」
最初のコメントを投稿しよう!