墓地の陰気

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 秋人はまず天明道へ電話を掛け、状況を報告した。  被害者もいることから、今から人を寄越して貰う事にした。   「悪いな、今から天明道に来て貰う事になった」 「しょうがないよ」  天明道が来るまでここに待機しなければならない。  だいぶ日が暮れて来たので真尋は飛んで帰っても分からないのではと提案するが、一緒にここにいると言うので二人で人が来るまで車の中で休む事にした。  本当は天明道に真尋を会わせたくなかったが、本人が大丈夫と言うので秋人も覚悟を決める。  車内で待っている間、秋人は真尋に訊ねる。 「お前は自分の事をどう考えている?」 「どうって?」 「妖の部分をどう捉えている? 何処まで己を妖だと考えている?」  真尋はずっと自分を人間だと言っていた。  しかしながら現時点でただの人と言うのは無理がある。  一体自分の事を何処まで理解しているのか疑問を持った。 「俺は………人間だよ」 「…………」 「まぁ、利音さんにはまだそんな事言ってるって言われるし、実際人から離れてってるなぁとは感じるけど、俺はどんなに自分の体が変わっても心はずっと人間なのは変わらないつもり」 「………そうか」  普段何も考えて無さそうな彼だが、本当は彼なりに苦悩があって、だけど自分なりに答えを見付けて、信念を持っている。    大きくなった……  秋人はそう感じると共に、その心を失わせない為に何が出来るだろうかと考える。  真尋を真尋のままで居させたいが、彼の行く道は雑踏を歩くように、進む道も見えなくなって行くのだろう。  そこに天明道と言う組織も前を阻んで……… 「ならば私はお前の道しるべとなろう。 忘れるな。私はお前の還るべき家だ」 「うん。ありがと………」  道が分からなくなったのなら迎えに行けばいい。  必ず真尋手を取ると約束しよう。  そんな会話をした後どのくらいか沈黙が続く。  いつ来るのだろうとそろそろ待ち疲れていた頃、後ろの方から車の音がした。  見ると複数台の車が見える。  どうやら漸く天明道の使者達がやって来たようだ。
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