墓地の陰気

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「ご足労頂きありがとうございます。 連絡を致しました、春日です」  そう挨拶をして握手を求めると、先頭にいる一人の男性が秋人の手を取り握手を交わす。 「天明道本部から参りました、代表の伊藤です。 羅刹鳥と陰摩羅鬼は捜索の通知を遂行隊へ出しました」  遂行隊とは秋人や宗像家のように本部から命じられた事を実行する者達の事だ。  何年か前から本部の連中がそんな風に呼ぶようになったようだが、とうの遂行隊と呼ばれる者達はそんな言い方はしない。  そして本部から来た彼らは調査と、ここに人が立ち入らないよう結界を張ったり、この周囲に羅刹鳥らがいないかの見張りでやって来たりと、人が殺されてその犯人の妖も逃げているせいか、かなりの大人数だ。 「それで被害者の遺体は?」 「あちらです」  秋人は伊藤の他に本部から来た五人を遺体を発見した場所へと案内する。  遺体を見た彼らは凄惨な現場であるにも関わらず、顔色を変えること無く遺体を調べていく。  慣れているのだろうなと思う。 「確かに目玉だけを取られている……… 春日さん、後は我々が処理致します。 貴方は本部へ報告書をお願いします」  そう淡々と言われる。  すると伊藤は秋人の車へ視線を向ける。 「ところであちらの方は?」  人と妖の気配を纏わせる者が車内にいることに気付いていた。  わざわざ本部から来たにも関わらず、何故車から降りて挨拶にも来ないのかと不満気だった。  秋人の意向でなるべく本部と関わらせたくないので車の中に待機してもらっていたが、目敏い彼らは気になってしまった。 「彼は私の身内の子です。 まだ学生で天明道には所属しておりませんので、どうぞご容赦を」  学生で天明道にも所属していない部外者なので、車内にいるように伝えていると伊藤に説明する。 「そうでしたか」  部外者だと伝えると納得してくれたが、質問は止まなかった。 「羅刹鳥と陰摩羅鬼は貴方だけで? 車にいらっしゃる方も戦ったのですか?」 「それは………」 「あちらの方も一戦交えたのなら話しをお聞きしたいのですが」  何故こうもしつこく食い下がるのか………?  やはり真尋の妖気はただの学生では誤魔化せないようだ。  
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