墓地の陰気

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「すみません、彼は先の妖との戦いで疲弊してしまったようなので、話しなら私が」  まだ天明道にも入っておらず、現時点で後ろ盾を得ていない真尋を本部の者と接触させたく無かった。  伊藤がどう反応するか待っていると、彼はそうですかと答えた。 「お疲れでしたら仕方ありませんね」 「すみません………」  何とか納得してくれたようだが、伊藤の視線は車の方に向いたままだ。  実際、伊藤は凄く気になっていた。  学生で天明道には所属していないと言うことだが、中には中学生でも天明道に所属している者もいるくらいだ。  彼の気配から人と妖の混血であることが感じられる。  それに妖気も強いものを感じる。  更に秋人の口振りから今回の戦闘にも加わっていたようだ。  ならば余計に何故未だに入っていないのかと気になってしまった。 「ではここはあなた方に任せ、私は帰って報告書を書いても?」 「そうですね」  これでここから離れられると安堵感を抱いたその時、車内からうわっと真尋の声がしたかと思えば、彼が車から降りてきた。 「真尋、どうし__」 「蜂!!蜂が車ん中いた!!」  どうやら車内に蜂がいたらしく、どうしようと秋人に泣きついて来た。  車へ目をやると、黒い昆虫がブ~ンと車外へ飛び去って行って、真尋はひぃ~と情けない声を上げ、秋人は呆れて溜息を漏らす。 「あれくらいで騒ぐな。 それにあれは蜂ではなく虻だ」 「アブ………? あれアブか………ってかどっちにしろヤバいじゃん!!」  真尋は虻を蜂と勘違いしていたようだが、本人にはどっちも刺す毒虫でしか無く、怖かったと声を漏らす。  すると真尋の前に伊藤がやって来た。 「どうも、天明道の伊藤です。 少しお話し出来ますでしょうか?」 「ふえ?えっと………あ〜………はい」 「………………」  折角このまま帰れると思ったのに、最後の最後でやらかしてくれると秋人はこちらをチラチラと見てくる真尋に一つ頷いて合図を送る。 「お疲れの所すみませんね。 例の妖と戦ったようですが、お二人はここへはどのような用事で?」 「墓参りです。 うちの墓がそこにありますので」 「ああなるほど、そうでしたか。 では羅刹鳥と陰摩羅鬼は何処から? この辺りに元々陰気はありましたか?」  伊藤は二人に羅刹鳥と陰摩羅鬼について事情聴取をしてくる。
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