墓地の陰気

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 秋人は自分が運転する車の助手席に真尋を乗せ、元来た道を帰る。  運転しながら遠い昔の記憶が蘇ってきた。 『いいか秋千代、今からお前に授ける名は誰にも知られてはいけない』 『はい、父上………』  これは秋人の父、貴眞が家族を守るために家を出た前日の事だ。  まだ元服の歳では無かった秋人だが、貴眞は既に自分の死を悟っていたからこそ、このタイミングで秋人き諱、つまり本名を与えた。  事情を知らない秋人は何故今なのだろうかと疑問に思ったが、聞ける雰囲気では無かった。  たが翌日その理由が分かる事になろうとは……… 『お前の名は____』  父も息子も不本意な形で亡くしてしまった。  今度こそは………………  秋人は赤信号で車を停止させると、窓から外を見遣る真尋を信号が青になるまで見ていた。  そしてその後陰摩羅鬼は天明道によって発見され滅せられたが、羅刹鳥は結局発見出来なかった。  人の姿で逃亡しているのだろうと予想される。  しかし、人の目玉を喰らうので放ってはおけない。  今後も捜索は続けられる。  一方墓場での調査を終えた伊藤は本部にて秋人の情報を調べていた。  一応天明道に所属している者の個人情報は登録してあるが、閲覧出来るのは上層部とごく一部の者だけだ。  伊藤にはその権限はないが、情報管理をしている同僚に夜中誰もいない時間帯にこっそり見せてもらった。 「春日秋人………江戸後期生まれで天狗の半妖」  パソコンには他に同居人までも記載されており、そこには高住真尋の名前がある。 「ひ孫?」  ひ孫と同居しているのならひ孫の親などとは同居していないのかと思うが、その他の家族についてはここには記載されていない。  真尋の親や祖父母は天明道とは関わりを持っていないのだろうか?  曽祖父が天明道に所属していて、尚且つ真尋があれだけ妖の血が濃い混血ならば、彼の親か祖父母が妖であるか、それに準ずる血を有している筈。  ならば秋人以外の親族の誰か一人でも天明道に属していてもいい筈なのにその情報は一切無い事に伊藤は疑問を持った。   「君、こんな時間に何をしている?」 「………っ!?」  突然後ろから声を掛けられ、体がビクッと跳ねる。  目の前の情報に夢中で、後ろにいる人の気配に気付かなかった。  恐る恐る後ろを振り返ると、そこには白衣を着た眼鏡の男性がいた。  
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