人と妖(上)

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 男性に急かされ利音は品を汚さないようにと慎重に木箱の蓋を開けた。  すると中には何やら巻物のような物が入っている。  そっと取り出して、ゆっくりと巻物を広げると草書体で書かれた文字が並んでいる。  利音が真剣な眼差しで読んでいる横で真尋も見てみるが、さっぱり読めないので早々に読むのを諦める。 「これは………」  すると人の姿の緋葉が声を上げた。  ずっと昔から生きている緋葉も当然のように草書体が読める。    利音は最後まで読み終えると男性へ目を移す。 「これ、何処で手に入れたんですか?」  射るような目で見る利音に男性は狼狽える。 「いや、普通にうちの死んだじいちゃん家の押入れに……… 片付けてたら出てきて……… 俺には必要無いんで引き取って欲しいんスけど、何か問題でもあるんですか?」 「別に問題があると言うわけじゃ無いんですけど、まぁ面白い巻物だなぁと」 「面白い?」  利音はニッと笑った。 「この巻物には妖怪の召喚術とか妖怪祓いの術が書かれてある。 非常に興味深い………」  利音にとってこんな物が手元に来るとは棚からぼた餅と、早速男性と値段交渉する。 「俺は買い取ってくれるならいくらでも………」 「そう?じゃあこの値段では如何ですか?」  利音は電卓に値段を打ち込む。 「はい、それで大丈夫ッス」  あっさり交渉成立し、利音はレジから現金を取り出し男性に渡した。 「ありがとうございました」  男性はお金を財布に仕舞い一礼すると足早に店を去って行った。  満足気な利音とは対照的に真尋は浮かない顔をする。 「大丈夫ですかねそれ」 「何が?」 「だってなんかあの人変でしたよ? 盗品じゃ無いですよね?」  何故男性はあんなにも挙動不審で、しかも値段交渉もせずにあっさり言い値で納得したのだろうか?  まるで早く手放したがっているような……… 「さぁね。 でもこれは特殊な巻物だ。 それこそ一般人には扱えないような」 「どう言う事ですか?」  確かこれを妖怪の召喚術だとか妖怪祓いの術だとかが書かれてあるなんて言っていたが、本当にそれが可能な物だと言う事なのか?  すると利音は面白いよねなんてまた何か企んでいるような顔をする。
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