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「どうぞ」
「すいません………」
居間に案内し、緋葉が青年にお茶を出す。
「俺は柳井修哉って言います。
半年くらい前にじいちゃんが死んだんスけど、その後に俺がそこに住むことになって………」
青年、柳井修哉は祖父亡き後、祖父の家を引き継いだ。
と言うのも、元々都会で安いボロアパートの借家に暮らしながら職を転々としていたので、これ幸いと比較的綺麗で広い祖父の家を譲り受けたのだ。
それに家からほど近い場所で年上の従兄弟が飲食店を経営しているので、半ば強引に雇って貰った。
「そこで暮らしてたんスけど、家の中結構散らかってきて、兄貴………その従兄弟が片付けに来てくれて、ついでにじいちゃんの遺品整理とかもしてくれたんスけど」
その遺品整理の際に従兄弟が屋根裏から見つけたのがあの巻物だった。
木箱に入っているそれを見たとき、修哉は何か妙な気配を感じていた。
元々霊感のある彼は開けない方がいいと従兄弟に忠告するが、普段だらしない生活をしている彼の言う事は聞かず開ける。
そして巻物を広げて見てみるが、書いてあることは分からない。
辛うじて読める文字の前後を従兄弟が予想しながら読んでいると、ふと風を感じた。
窓も開けていなければ、エアコンも扇風機も着いていない。
無風の筈なのに生ぬるい風を確かに感じたのだ。
マズい。
修哉はそう感じたが、霊感の無い従兄弟は何も感じていなかった。
結局何もなかったななんて従兄弟は言って片付けをした後さっさと帰って行ったが、修哉はその後何かがいる気配をずっと感じていた。
修哉は怖くなって神社やお寺にお祓いに行ったが、家の中の気配は消えることは無かった。
そしてこの巻物が元凶だと思ったが、捨てるのはなんだか余計に悪くなりそうなのでここへ売りに来たが、それでも気配が消えることが無かったので、巻物に気配を戻すことは出来ないかと、売ってしまったのを後悔し取り戻しにやって来た。
「アホって言われるんだろうけど、マジで何かいるんだ………
ずっとあの家に纏わり付いてる………」
「信じるよ」
「え………」
下を向いていた修哉は信じるの一言にぱっと顔を上げた。
修哉の目に映るのは不敵な笑みを浮かべた青年だった。
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