340人が本棚に入れています
本棚に追加
不敵な笑みを浮かべた利音。
修哉はその笑みがどう言った意味を含んでいるのか読み取れず、隣りにいる緋葉に助けを求めるように見る。
その緋葉はどうなさるつもりだと利音に問う。
「う〜ん、出来れば面白そうだし、その家に行ってみたいけど………」
「いや、え?」
その家に行ってみたいと言う利音に困惑すると共に冷やかしに来るつもりかと憤慨する。
「俺ん家は心霊スポットじゃねぇぞ!!」
「知ってるよ。
でも妖が棲み着いてる。
俺ならそれを祓ってやれるけど?」
「は?」
彼は妖と口にした。
幽霊ではなく妖と………
それに祓ってやれるとも言った。
「アンタ一体………」
「俺はただの骨董屋だよ。
ちょっとだけ妖に詳しいだけのね。
それに貴方も霊感どころか視えてるんでしょ?
だったら分かるんじゃない?
異形の存在がいるって事くらい」
「………っ⁉」
物心が付いた時からこの世に存在しないはずのものが視えていた。
だけど周りの人達はそれらが視えない。
自分がおかしいのかと、なるべく視ないようにしてやり過ごして来たが、たまにあちらから寄ってくる事もあった。
仕事をしていても構わずこちらに迫って来たりもするので、途中で仕事を放棄したりしてクビになったり………
結果、仕事が長続きせずいつの間にか職を転々としてきた。
祖父の家には何もいなかったし、近くに従兄弟が飲食店をやっていると言う事で漸く安寧が手に入ると思った矢先にあの巻物だ。
やってられない………………
「もう、何でもいいからあれを何とかしてくれ………」
誰でもいいから早くどうにかして欲しいと、怪し気な骨董屋に藁をも掴む思いで妖退治を頼んだ。
「じゃあ今から行っていい?」
「い、今から?」
まさか今すぐに行くと思わず修哉は戸惑う。
何も準備もしてないし、心の準備も出来ていないのでまた今度ではダメかと問うが、利音は逆にこう聞き返してきた。
「別に俺はいいけど、アンタ今日寝られるの?」
「………っ」
「耐えられないから巻物を取り戻しに来たんじゃないの?」
「それは………」
確かにそうだ。
また今度では、それまでずっとあの陰に怯えて過ごさなければならない。
「思い立ったが吉日」
利音がそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!