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利音にいらないと言われ、少しキレ気味に電話を切った真尋。
もう少し言い方ってもんがあるんじゃないかと憤る。
ムカついたので少し寄り道して何か美味しいものでも買って帰ろうと、デパートに寄ってみる。
「この唐揚げ美味そう」
さっきまで唐揚げを食べていたと言うのに、それを忘れてしまったかのように呟く。
正直先程食べた唐揚げの味は値段の割にそこまで美味しいとは言えなかった。
やはりデパートで販売しているような物の方が美味しそうに見える。
「ああでもあっちの海鮮丼も美味そう………」
少々お高めの値段だが、たまには贅沢してもいいのではと思う。
ここは勇気を振り絞って海鮮丼を買おうとしたその時、何やら変な気配を感じた。
「なんだ………?」
まるで誰かに見られているような、そんな気配。
その気味の悪さに真尋は海鮮丼を買わずに外に出た。
デパートの中は混み合っていて気配の元が掴めないからだ。
けれど外も人混みであまり変わらない。
兎に角面倒な事に巻き込まれないようにと急いでなるべく遠くへと小走りで移動する。
そして人気が無くなった所で猛スピードで飛んで逃げた。
幸い怪しい気配は消え、真尋を追ってくる事は無かったが、一体何だったのだろうかと不安は拭えない。
一人の時に何かあったら嫌だなと思ったので、利音の携帯に電話をして、やっぱり自分もそっちに行きたいと掛け合って彼らの元へと行く事となった。
住所を伝えられスマホのナビを頼りにそこまで飛んで行く事にした。
その裏で一人の女性が誰かに電話をしていた。
「申し訳ございません。
撒かれました。
………ええ、はい、間違いございません。
あの者が高住真尋です」
女性はそれだけ伝えると電話を切った。
そして電話の向こうの相手も通話が切れたスマホを見て笑みを浮かべていた。
白衣を着て、胸にはプラタナスのブローチを付けたその男はご機嫌に天明道本部の研究室でパソコンに向かっていた。
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