人と妖(上)

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 一方修哉の車を後ろから追って車を走らせる利音。  修哉の車は住宅街から外れ、一軒だけポツンと建つ家の前で止まる。  利音も彼の後ろに着き、車を停車させた。  修哉が車から降りたので二人もそれに続いて彼の待つ玄関へ足を進める。 「ここ、俺んちだけど………」  自分の家だと言うのに入るのを躊躇う修哉。  利音は入っていい?と確認すると、修哉は鍵を開ける。  それでもまた入りたがらない彼に痺れを切らした利音が、人の家だと言うのに勝手にドアを開ける。 「利音殿、そんな勝手に………」  遠慮と言うのを知らない利音にヒヤヒヤするのと呆れるのとで緋葉は嘆息を漏らす。  その時緋葉はふと何か気配を感じ空の方を見るが、ばさりとカラスが飛んだだけで何も無い。  その後も周りを見渡すが、もう何の気配も感じなかった。  そんな緋葉に修哉は視線を向けていると、それに気付いた緋葉が何か?と質問を投げる。 「いや、なんかアンタ……… いや、やっぱ何でもないッス………」  どうやら彼は緋葉に人とは違う気配を感じているようだ。  しかし緋葉が妖であるとは明かすつもりはない。  ただでさえこの家に潜むものに怯えていると言うのに、わざわざこれ以上驚かすのは酷だ。  家主より先に中に入った利音は、この家に潜む妖の正体をある程度見破っていた。  まだ姿を現さないその妖だが、隠れてこちらを観察しているのが分かる。 「やっぱりね………」  そう呟いた利音のスマホがバイブレーションを鳴らした。  見ると真尋からだ。 「もしもし」 『あ、利音さん、多分近くまで来たんですけど……… あ、居た!!緋葉〜』  家の外から真尋の声がして、その少し後に電話口からも真尋の声が聞こえる。  どうやら緋葉の姿を見つけたようだ。  走ってやって来た真尋はまず修哉に挨拶した。 「あ、すいません……… この間はどうも。 あの、ホント迷惑かもしれないんですけど、俺もお邪魔しても?」 「え、ああ、まぁ………」  突然現れた真尋に戸惑いを見せるが、ここまで来てしまったので嫌とも言えず許可した。    そして利音とも一言二言言葉を交わすと、早速中へと入る。 「うわぁ〜………」  正体は分からずとも何か妖がこちらを伺っていることは分かる。
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