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「お邪魔しま〜す」
利音はそう言って靴を脱いで玄関を上がる。
すると妖が姿を隠しながらも来るなと言わんばかりに妖気を大きくさせ威嚇する。
利音らが来た途端嫌な気配が強くなったことに修哉は気付いた。
これ程までに嫌な気を感じたのは初めてだ。
「利音殿、私が引き摺り出そうか?」
緋葉がそう言ったが、利音は断った。
「君が動く事もないよ。
ねぇ、出てきなよ。
どうせ互いに殺り合うしかないんだからさ」
利音が隠れている妖へそう挑発するが、まだ出てくる様子はない。
「どうした?怯んだか?」
更に利音は挑発を続けると、その妖はこちらへと襲ってくる。
すると緋葉が手を伸ばし、何かを掴む仕草をした。
それと同時に、キュインと小動物のような鳴き声が聞こえた。
緋葉がその妖を捕まえたのだ。
緋葉の手を見ると、真っ白なモフモフとした獣の尾っぽを摑んでおり、その尾っぽの先にイタチのような体に、狐のように尖った顔の獣がだらんと逆さにぶら下がっている。
「管狐か?」
緋葉が言った。
管狐。
人に憑く妖で、姿はイタチに似て竹筒に入れるくらいに細く小さい。
似たような妖でオサキ狐がいるが、こちらは自分で行動するタイプで、管狐は主の命令を聞いて行動するタイプだ。
この狐がどちらかは正直分からないが、緋葉は何となく管狐かと思い、そう口にした。
「え、可愛いんだけど………」
捕えた管狐を見て動物なら何でも好きな真尋は頬を染めた。
その管狐は尻尾を掴む緋葉の手から逃れようとジタバタと足掻くが、ぶらんぶらんと揺れるだけで、どうやったって逃れられない。
そんな管狐に修哉は状況把握が出来ず、頭が真っ白になり、フリーズしていた。
元々妖を少し視ることが出来た修哉だが、あの陰がこんな小さな獣だと言うのにまずびっくりなのと、利音らが手慣れた様子でいとも簡単に捕まえ、その種類まで特定していることに、本当にそれらの専門家なのかなど色々と頭の中が処理しきれない。
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