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利音は管狐に対し逃げるなよと、もし変な行動を起こせばすぐに殺すと釘を刺し尻尾を掴む緋葉に放すよう促した。
天才祓い屋の利音に大天狗の血を継ぐ真尋、そして烏天狗の緋葉に囲まれすっかり小さく縮こまって冷や汗を流す管狐。
元々それ程強力な妖とは言えないので、彼らに囲まれ怯えてしまっている。
「ちょっとちょっと、この子怖がってるじゃん。可哀想に………」
真尋は怯える管狐を抱き上げ二人に対しあまり威圧感を与えるなと注意するが、とうの管狐は、抱き上げた大天狗の気配が色濃く出る真尋に恐怖している事を、真尋自身が気付いていない。
よしよしと撫でるその手に管狐は涙目になっている。
人に憑いて、人の精気を餌にし、その人の口を借りて言葉を発し、術者はそれを利用し占いや呪術を使うが、その内精気を吸い尽くして術者は精神を病むという管狐。
所詮人を介してでしか戦う術をあまり持ち合わせていないので、こんな霊力や妖力の高い者の前では借りてきた猫でしか無い。
「ま、そう言うわけだから柳井修哉さん。
取り敢えずもう怖がん無くて大丈夫」
「え、あ、ああ………」
あまりにもあっさりと解決してしまい、修哉は呆気に取られると同時に、あんなに怖がっていたのに管狐のこんな姿を見て少しだけ気の毒になってしまった。
「あ、あの………」
「ん?」
「その、管狐?とか言うのどうするんスか?」
元々巻物から召喚されたのだろう管狐だが、この家にいると言う事はこの家に憑いていると言う事だ。
このままではおそらく修哉の精気も喰い尽くされる事だろう。
ならば手っ取り早くこの場で処分してしまった方が早いが、真尋はきっと可哀想だからネコと一緒に飼えないかと言い出すに決まってると利音は考える。
面倒だなと利音が思っているところに修哉がこんな事を言い出した。
「その………放してやれない?」
「はぁ?」
まさかの発言に利音は耳を疑った。
「いや、なんか………可哀想になってきて………」
この男も真尋側なのかと利音は頭を抱えた。
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