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人と妖(下)
借りてきた猫のようにシュンと小さくなった管狐を見て、あれ程恐ろしい思いをしたと言うのに、なんだか可哀想になって来た。
「あのさ、管狐ってのは人に憑いて精気を喰うんだよ。
人が管狐を利用してるつもりでも、こっちが利用されてるわけよ。
それだけ狐とか憑き物ってのは狡猾だ」
可愛い見た目に騙されるなと、利音は修哉と共に真尋へもそう牽制する。
妖を簡単に信用するなと言われ修哉は何も言えず黙ってしまった。
確かに妖に対してはいい思い出はないし、彼らは専門家で修哉が意見出来る立ち場ではない。
「でもさ、せめてこの家から追い出すくらいには出来ませんか?」
すると今度は真尋が聞く。
うるうると目を潤ませる管狐を見ると居た堪れなくなる。
なのでせめて人を傷付けないことを条件に今回だけは見逃せないかと考える。
「いやだから………」
何言ってるんだと利音は呆れる。
すると緋葉がこんな事を言った。
「………この管狐は家には棲み着いてはいるが、柳井殿には憑いていないように思える」
「え?」
もし彼に憑いているなら外でも彼に憑いているはずだと言う。
確かに管狐は修哉自身に取り憑いているとは言えないと利音は今更ながら気付く。
利音は持ってきた巻物を手に、確か管狐を召喚したのは彼の従兄弟だと言っていた。
ならば召喚した者に憑いているのかと言えばそうでもないようだ。
一体どういう事だと利音はこの場で巻物を広げた。
もしかしたら何か分かるかもしれないと。
管狐に直接聞けたらいいのだが、生憎管狐自身は人語を話せないようなので無理だ。
「………緋葉、お前も何かヒントになりそうな事書いてないか見て」
この場で読めるのは利音と緋葉の二人だけ。
手分けして何か書いていないかと探す。
その間管狐はそろ〜っと逃げ出そうとするが、それをネコが阻む。
同じ憑き物の妖だが、自分より大きく強い犬神に管狐は成す術もない。
ネコはと言うと管狐に興味津々のようで、上半身を伏せお尻を高く上げるプレイバウの仕草をするが、管狐はただただ縮こまっているので、その内ネコは管狐の横に伏せて尻尾で管狐を包み込み、寝るポーズを取る。
最早管狐は失神寸前である。
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