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人ならざるものが視える修哉は、信じない瑞稀にこの際すぐそこにいるんだと言う事を訴えた。
親にも友達にも信じてもらえず、今まで恐ろしい思いと、好奇の目で見られてきた孤独を知ってほしい。
しかしながら瑞稀は妖やら霊やら言われてもピンと来ない。
だから修哉に対してどうしても厳しい態度を取ってしまう。
「あのさ、霊感なんて気の持ちようだって。
いないと思えばいなくなるって。
所詮生きてる人間が一番怖いっての」
瑞稀はそう言う類いのものは気の持ちようで何とかなると考えている。
そもそもあまり信じていないので、根本から分かり合えない。
そんな瑞稀の様子を見ていた真尋は修哉に同情してしまう。
自分も、家族や学校の友達とは共有出来ない。
そこにいるのに周りは視えないのがもどかしかった。
だから今利音や緋葉と一緒にいるのは気が楽ではある。
本来視えない人にその存在を知らせる必要性を感じないが、いっそ妖と言うものを視せたらどんな反応をするだろうかと、利音はちょっとだけ彼らに意地悪したくなる。
「ねぇ緋葉、視せてやってよ。
二人共どんな反応するかな?」
「私の元の姿をか?正気か?
人によってはショック死とやらになりそうだが?」
緋葉は最近覚えた外来語を使いながらやんわりと断るが、利音は大丈夫大丈夫と楽観的に答える。
しかもどんな反応を見せるかに修哉も入っている所に利音の性格の悪さが垣間見える。
当たり前のようにそこにいる人間と思った者が妖なんて腰を抜かすだろうと。
妖力の強いものは実体を持たせることが出来るので、緋葉の元の姿も普通の人間にも見える。
「信じる信じないは人の勝手だけど、視えるなら信じますか?」
「は?」
利音にそう聞かれた瑞稀は、彼らは修哉のそう言ったお友達なのかと、面倒そうな顔をする。
利音は緋葉に目配せをして、仕方が無いと緋葉はそれに従った。
少し厳つい人の姿から漆黒の羽毛と翼を生やし、顔は烏に変化し嘴が露わになる。
人から烏天狗へと変貌した緋葉に二人は驚愕し、声すら上げられず口をパクパクさせている。
しかし声を発する事すら出来ない瑞稀とは違い、修哉は驚きはしたが、その後に意外な言葉を口にする。
「ああ、だからか………
なんか違う気がしたのは………」
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