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管狐の話しを聞く限り、その主だと言うタイチロウは祓い屋では無かろうかと利音らは思う。
もしくは、それに関係するような職業。
今利音が持っている巻物は、その主とやらが書いたのだろうかと推測する。
「んで、そのタイチロウさんはどうなったの?」
現在生きているのか死んでいるのかを利音が問うと、管狐は分からないと答えた。
「タイチロウはボクをその巻物?に閉じ込めたから」
タイチロウは理由は分からないものの、管狐をこの巻物へと封じたようだ。
そして修哉の従兄弟により外に出されたが、修哉が怖がって見ないようにと目を背け拒んだ為、近付けなかったのだと言う。
しかしタイチロウについて詳しい事が分からないとなると、これ以上管狐から聞いても何も出てこない気がする。
取り敢えず管狐には修哉から出てもらって、修哉にタイチロウと言う人物を知らないか聞いた方が早い気がする。
「じゃあもういいから、その身体から離れ………」
「………………??」
その身体から離れて。
利音はそう言いかけて、外に強い霊気と妖気がこちらに近付いてくることに気が付いた。
それは真尋や緋葉だけでなく、管狐も感じており、彼らは外に出て様子を窺う。
すると一人の着物を着た美しい女性と、その女性の肩に乗る妖気を纏った一匹の猫がこちらにやって来る。
「誰………?」
真尋がそう呟いた瞬間。
「キャンッ………⁉」
獣の鳴き声が傍で聞こえたかと思えば、管狐の身体が修哉から弾き飛ばされ、地面に血塗れで倒れていた。
「………っ⁉」
管狐が追い出された衝撃で後ろに尻もちをついた修哉は、負傷した管狐に駆け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
身体を乗っ取られて、自分の意思とは無関係に声を出したり動いていたとは言え、修哉は中から見ていた。
だから管狐が悪さをしたわけでは無いと知っているから、すぐさま駆け寄ったのだ。
「憑き物を利用していると思っていても、実際には人間が利用されている。
力の無い者がそれに手を出しても、ミイラ取りがミイラになるだけよ」
そう着物を着た女性が言った。
長い黒髪を棚引かせたその美しい女性は管狐の方から飛んできた、30cm程の鳥を象った白い紙のような妖気を纏ったそれを指に乗せる。
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