人と妖(下)

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 突如現れた女性と重傷を負った管狐。  真尋達は彼女に対して警戒する。  彼女の口振りから、管狐を修哉から追い出し、怪我させたのはこの女性。  おそらく彼女が指に乗せている、式神のような妖を使って襲わせたのだろう。 「いきなり来てそれは無いんじゃない? て言うかアンタ誰?」  利音がそう問うと女性は名を名乗る。 「わたくし、鹿北真奈と申します。 貴方は、何処かでお会いしたことあるかしら?」  鹿北真奈。  天明道の御三家、鹿北家の若き当主だ。 「天明道のパーティで見掛けたんだろ。 俺は一回しか行った事無いし、俺はアンタの事は名前しか知らない。 だから直接会ってすら無い」  そう利音が言うと、鹿北は記憶を手繰り寄せるように少し横を見て、あっと小さく反応した。 「宗像利音さん、かしら? 道理で霊気に何か覚えがある気がしたの。 それに一回だけしか来てないって事にピンと来たわ。有名だもの」 「あ〜はいはい。 それはもうどうでもいいよ。 それより、いきなりどう言うつもり?」  管狐を見て利音は眉を顰めそう問い詰める。  今緋葉が回復の術を管狐に掛けているが、傷は思った以上に深く、正直厳しい。  すると鹿北は、何を言っているのか分からないと言うように、訝しげに首を傾ける。 「憑き物ってとてもずる賢いの。 こうやって不意をつかないと逃げられてしまうもの。 あの方は霊力があまり強い方では無いみたいだから、忠告の意味を込めて追い出して差し上げただけ」  あくまでも祓い屋としての善意でやっただけだと彼女は答える。  その答えに利音は口に手を当てて小さく嘲笑した。  だって自分も同意見だったらから。  いくら管狐が主を未だに想っていると言ったとて、修哉の身体を乗っ取った事実は変わらない。  あのまま管狐が我々を騙して何かしようと考えていたかもしれないと言うのに………    ネコだってそうだ。  主である自分を慕っているフリをしながら、虎視眈々と喰えるチャンスを観察している。  だから憑き物の性質はよく分かっていた筈だ。         なのに管狐の言い分を聞いて納得してしまった自分は、どうやら随分彼らに感化されてしまったのだなと真尋や緋葉を見て思った。  
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