人と妖(下)

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 管狐に突然致命傷を負わせてきた鹿北に修哉は怒りに震えた。 「悪いが、お前に渡すもんはねぇ。 だからさっさと帰れ!!」 「………………」  どうやら自分は招かれざる客のようだと悟った鹿北は一つ息をついてこう言った。 「残念ね。 それに私が欲しい巻物はきっと貴方の手に余る物よ?」 「問題無いよ。 既に俺の物だから」  利音がそう横から口を出す。 「これでしょ? 因みにコレにあの管狐が入ってたんだよね」 「そう、でも私にはもう式神は沢山いるから………」  彼女は巻物が欲しいと言いながら召喚された管狐には興味無いかのような発言をした。  ならば何故欲しがるのかと真尋も修哉も疑問が浮かぶ。  だが利音は彼女の本当の目的が分かっているようで、コレが知りたいんだろ?と両手を前に翳す。 「囲え………」  利音がそう呟くと周辺の空気が変わった。  周りを警戒する鹿北の背後にいつの間にか利音が移動していた。 「………っ!?」 「滅」  五芒星を描き、鹿北へと襲う。  だが鹿北もすぐさま対応し、結界で自分の身を守り、利音の技を防ぐ。  しかし利音の技はまるでダメージが無い。  幽霊のようだと感じた鹿北は目の前の利音に違和感を覚える。 「こっち」  その違和感の正体。  目の前に利音がいる筈なのに、後ろから利音の声が聞こえたのだ。 「………………」  振り返ると後ろにも利音がいる。 「それが巻物に書いてある妖祓いの術かしら?」  そう、利音が使ったのは巻物に書かれていた妖を祓う術だ。  周囲を結界で囲み、霊気で偽物の自分を作り出す。  結界内で有効の幻術である。  まだ一度も試したことが無く、ぶっつけ本番でやってみたが、上手く行った。 「そう……… 私が先に目を付けたと思ったのに残念だわ。 先祖代々忍者の柳井家に伝わる秘伝の忍法。 我々もその術を教わりたかったのだけど………」 「忍者?」  初めて聞くワードだと修哉は首を傾げる。   「あら、ご存知無くて? てっきり貴方が後継者なのだと思ったのだけど、確かに貴方は後継者と言うには霊力が弱すぎる」  そんなの知らない。  自分の家の事なのに何も知らないのと、弱すぎると言われてしまった事に修哉はやきもきする。
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