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そんな利音の好奇心で雇われた真尋は盛大にため息を付いた。
「別に君を取って食おうなんて思ってないから安心しなよ」
何か良からぬことをされると思っているのではと利音はただの好奇心だと真尋に危害を加えるつもりはないと伝えるが、真尋は首を振った。
「いや、そうじゃなくて……
折角妖とは無縁の世界で人として生活しようと思ったのに、結局そう言うのと関わるハメになってしまったと思って」
真尋は10歳のときに突然天狗の力が発現してしまった。
それまで普通の人間として何も知らず生きてきて、いきなり未知の世界に引きずり込まれ、妖の厄介な部分から逃げ出したくて家を出て暮らそうと思ってたのに、結局自分の宿命から逃れることは出来なかった。
「まぁ君の場合、逃げようとしても誰かには見つかるでしょ。
妖との混血自体珍しい。
ましてや隔世遺伝で力を得るなんて聞いたことがないし、興味は持たれるよね」
「……」
ただでさえ人と妖の混血は珍しい。
それは人と交われる妖は相当な力を有していなければ無理だし、半端な力では霊感のない人には認識すらできない。
先祖に妖と交わっていても、それが孫の世代まで遺伝するかは分からない。
真尋の世代になれば霊感を持つ者はいても、まず普通の人と変わらないだろう。
そんな稀有な存在の彼に興味を持つものは必ずいる。
それが利音のようなただ単に面白いと思うものならいざ知らず、あるいは敵意を持つ者、あるいは利用したい者と言った誰かが真尋に近づくと面倒である。
真尋もそれは承知である。
けれど霊感もないただの人として育った身としては人であることを諦めたくはなかったが、どうあっても自分は"そちら側"なんだなと感じた。
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