不思議な骨董屋

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 互いの正体を知れた所で真尋はふと思い出した。 「あの…俺が最初に来たとき、天狗の掛け軸あったじゃないですか。 あれって普通の掛け軸ですか?」  真尋が就活に励む中立ち寄ったこの骨董屋で見た掛け軸。  目が動いたような気がしたが、あれは本当に気のせいだったのだろうか? 「ああ、あれ……… あるよ蔵に」  そう言うと店の裏にある大きな蔵に案内された。  大きなその蔵には結界が張られており、利音は人差し指と中指を立て「解」と呪文を唱えると、一部の結界が解かれた。  この結界も視える人にしか視えない。 「あの、なんで結界なんか……」  利音はその問いには答えず蔵の扉を開け、中へと足を踏み入れる。  中に入ると骨董品の数々が並べられていて、日本人形や西洋の人形、ぬいぐるみや子供の玩具等様々な品物が保管されていた。  しかもそれらは其々を感じる 「ここは………」 「あ、あった」 「??」  利音が取り出したのは真尋が見た掛け軸だった。 「ここは俺がコレクションしてる曰く付きの品々。 勝手に動く人形とか、持ち主に災厄をもたらす物とか」  利音はそう言った曰く付きの物を収集する趣味がある。  集めて騒がしい様子を見て楽しむのだ。  一応何かあってはいけないので蔵には結界を張っている。  悪趣味だなと真尋は思ったがそれを口に出すことはせず、この掛け軸もそのコレクションの一つなのかと質問する。 「この掛け軸は恐らく作者の念と言うのが乗り移った奴ね。 でもそれほど強い物では無いし、たまに目をぎょろぎょろ動かすだけだから俺もあんまいらないなって…… だから売り飛ばそうと店に出したんだけど、売れそうに無いから引っ込めた」  やっぱり目が動いたのは見間違いではなかったと納得した。
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