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呪いの笛
真尋が利音の店に来て2ヶ月が経とうとしていたこの日、真尋が大学から帰った夕方に二人は店の裏にある蔵にいた。
利音のアンティークなコレクションが眠るこの大きな蔵には結界が張ってある。
理由はそれらが"曰く付き"であるからだ。
所謂呪いのなんたらが数多くあり、中には普通の人の手には持て余るような厄介な物まで存在しているから念の為結界を張っているのだ。
そしてそこに新たなコレクションが加わったようで利音は嬉々としていた。
その手元には何やら怪しげな札が貼ってある古そうな日本の笛が握られていた。
「何ですかこれ……」
「呪いの笛」
「それは何となく分かります」
真尋の疑問に簡潔に答える利音。
お札が貼ってあるのでそう言った類の物であることは分かるのでそれ以上の説明が欲しいのだがと訴える。
「この笛を吹いた者は呪われるらしい。
前の持ち主はこの笛を吹いたあと事故にあって亡くなったとか、その前は吹いた直後に心臓発作で亡くなったっぽい」
「はぁ……」
淡々と答える利音にあまり興味無さそうに力の無い返事を返す。
「て言うかこんな物何処で手に入れるんですか?」
この蔵には沢山そう言った物があるが一体何処から仕入れるんだと疑問に思う。
真尋に出会うまでネットも利用していなかったようなのでそのパイプが気になる。
「まぁ、寺とか神社とか……
怪奇現象に悩まされる人から持ち込まれた物を俺が引き取ってる」
「成る程」
寺や神社ならそう言ったものも結構持ち込まれだろう。
妖祓いの家系の彼にならこの面倒な品々も安心して受け渡しそうだ。
「と言うことで真尋君」
「はい」
改まった様子で語りかけられ、背筋を伸ばす。
「この笛を君が吹きたまえ!!」
「はい?」
笛に貼られた御札をベリっと剥がしたかと思うと、笛を持った手をぐいっと真尋の前に差し出された。
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