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「利音さん……」
殺られそうになるのを利音に寸前で助けられる。
この光景に何だか既視感を覚えた。
だが、それよりも気になることが……
「その包丁みたいなの何ですか?」
彼の手には見慣れぬ刃物がある。
「包丁………小刀ね。
これも俺のコレクションだよ。
鬼神が作ったとかなんとかって言われてて、確かに妖気が籠ってる。」
曰くその昔、鬼が妖気を込めながら作った妖刀なのだと言う。
霊力を小刀に込める事で刃に霊気が纏い、妖を斬る事が出来ると言う。
使い方によってはとんでもない対妖用の武器である。
説明を聞いた真尋は、利音の変な収集癖も案外役に立つのだなとネコの事も然り、そう思った。
「まぁ、俺あんま運動神経いい方じゃ無いから使う機会少ないけどね」
そう言いながら利音の目は深手を負った椿をロックオンしていた。
そこで真尋ははっとする。
「利音さん、まさか殺す気じゃ無いですよね?
彼女だって人の被害者だ」
そう聞かれた利音は呆れた様子で不快感を露にする。
「はぁ?被害者?バカじゃないの?
どんな理由があっても人に危害を加える時点で祓う対象なわけ。
言っとくけど、邪魔するなら君も祓うよ?」
彼の脅しに思わず息を飲んだ。
真尋を祓うと言ったその目が本気だったからだ。
初めて彼を怖いと思った。
そして利音と真尋が話している間、椿は負傷した右腕を木の根が腕の形へと変え、椿の花弁がその周りで散ると元の腕へと再生した。
それを見て利音は小刀を利き手ではない左手に持ち代え、右手は胸の前に構える。
「滅」
五芒星を描き放たれた滅術。
それを椿は花弁を無数に舞わせ術を受け止める。
その為目の前が塞がれ、視界が開ける時には利音が小刀を右手に持ち代え椿の目の前に現れる。
「……っ!!」
攻撃を受けるすんでで後ろへと避ける。
もう一度体勢を整えようと考えたその時、背後から黒い影が椿を覆う。
後ろを振り返る余裕もなく巨大化した犬神、ネコが椿を襲い、太い足に地面へ背中を押さえつけられる。
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