〈ジイちゃんの家で①〉頑固ジジイ

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〈ジイちゃんの家で①〉頑固ジジイ

 ワシは最近定年退職を迎えたばかりのジイサンで年齢は60歳。人はワシのことを頑固ジジイと呼ぶ。フン、別にワシが特別頑固なわけじゃない。ただ、周りの連中があまりにも軟弱なだけだ。  今から数ヶ月前のこと。定年退職を間近に控えた頃に、もうしばらく働かないかと会社から声をかけられた。だがワシはもう働くつもりはないと言って(ことわ)ってやった。  子どもたちはそれぞれ独立し、皆それなりにやっている。ならもう働かなくてもいいだろう。これからは気ままに生きてやるさ。  仕事を辞めたワシは、まず押入れの大掃除に取り掛かった。ずっとバアさんから押入れの中を整理しろと言われていたのだ。バアさんと連れ添って30年以上経つが、口うるさいのはずっと変わらない。  これまでバアさんから押入れ掃除を強要される度に、『定年後に時間が出来たらやってやる』と、言い逃れをしてきたのだが、ついに年貢の納め時が来たってわけだ。  さて、押入れの整理を始めたのはいいのだが…… 早々に思い出のアルバムを見つけてしまい、それからは整理などそっちのけで、ずっとアルバムを眺めている。まあ、大掃除の際の定番といったところだろう。今日、バアさんは出掛けているので何の問題もない。 「ジイちゃん、遊びに来たぞ!」  やって来たのは孫のタクヤ。小学校の3年生で、我が家の近所に住んでいる。ワシのバカ息子の嫁、そうあのオニ嫁のヤツが、ワシとバアさんとの同居を嫌がったんで、嫁の尻の敷かれている我がバカ息子は、わざわざワシの家の近くにアパートを借りて住んでいる。本当に情けない息子だ。  孫のタクヤは最近少しお兄さんになったようで、時々一人で我が家に遊びに来るようになっていた。ワシは自他共に認める頑固ジジイだが、孫の前では天使になれると自負している。この点は、そこらへんにいる他の年寄りと変わらないだろう。
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