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結末
大きくニュースに取り上げられることもなく、女の子を見つけてもらえたのかをあえて俺が調べることもないまま、死体の居場所の手紙を送ってから数カ月が経っていた。
ポルターガイストも起きないことから、女の子は見つけてもらえたのだと第六感的確信があった。
ついに俺は、霊がらみで警察や世間の目からうまいこと切り抜けられたのだ。
そのことが嬉しくて仕方なかった。
今回のことで、顔がさされることもなく、声で犯人扱いされることもないのだ。
コンビニでビールとさきイカを買った。
ささやかな祝杯だ。誰も文句はないだろう。
夏の暑さもあって、ビールを飲みながらアパートに戻ると、俺の部屋の前で年配の男性が立っていた。
背筋に冷たいものが走った。
何度も経験した嫌な予感だ。
年配の男は俺に警察手帳を見せてにらみつけた。
「お前、xxさんに手紙送っただろ。」
「…何のことです?」
俺はとぼけるしかなかった。
証拠は何もないはずだ。
「とぼけても無駄だ。毎度毎度気持ち悪いことしやがって。
俺はお前を絶対に逃がさないからな。
次こそは捕まえてやる。覚悟しとけ。」
そう捨て台詞を吐いて年配の男はその場を去っていった。
俺はその場にしゃがみこんだ。
勘違いしていた。
いくら足がつかないように努力しようが、そんなのは俺の自己満足でしかなかったのだ。
今回こそはうまくいったと思った自分が腹立たしい。
迷宮入りした事件の死体の在処を伝えるという共通点がすでに俺には出来上がっていたのだ。
あー、また死にたくなってきた。
霊の手助けなんかしても、何も報われない。
完
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