0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
鍵盤を一つ
無作為に叩く
ターン
と
弾くのではなく
叩く
それは物理的な衝突のはずなのに
俺の耳に届く頃には
精神的な衝突に変化しており
耳の奥の液体が震え
数学的な増幅を繰り返し
脳に電気が到達する頃
また一つ
ターン
と
鍵盤を
無作為に叩く
君はいったい
どこに行ったのだろうか
頭の中で
線香花火が弾けるように
年老いた俺と
年老いた君の
何十年も共にした
同じ色の景色が
今まさに
火の粉になって
地面に触れそうな
その瞬間
どうしてあのとき
俺たちは信じてしまったのだろうか
耳に残る夢
音
君の心臓の
儚さは
鍵盤の重みと
小さくなった君の
いつかは来るその日を思えば
無作為な君との出会いが
また始まるのかもしれないと
最初のコメントを投稿しよう!