詩「夢の音」

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鍵盤を一つ 無作為に叩く ターン と 弾くのではなく 叩く それは物理的な衝突のはずなのに 俺の耳に届く頃には 精神的な衝突に変化しており 耳の奥の液体が震え 数学的な増幅を繰り返し 脳に電気が到達する頃 また一つ ターン と 鍵盤を 無作為に叩く 君はいったい どこに行ったのだろうか 頭の中で 線香花火が弾けるように 年老いた俺と 年老いた君の 何十年も共にした 同じ色の景色が 今まさに 火の粉になって 地面に触れそうな その瞬間 どうしてあのとき 俺たちは信じてしまったのだろうか 耳に残る夢 音 君の心臓の 儚さは 鍵盤の重みと 小さくなった君の いつかは来るその日を思えば 無作為な君との出会いが また始まるのかもしれないと
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