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「真理愛、もう一回読む? 他のがいいか?」
綺麗な星空の絵を食い入るように見つめている真理愛に訊いてみる。
「……これ」
布団から覗かせた指先で圭亮の持つ絵本をそっと差しながら、娘が囁くように告げた。
「よし、じゃあもう一回な」
二度目を読み終わった頃には、とろんとした眼をしている真理愛。
「真理愛、今日はおしまいでいいか? もっと?」
もう眠いのだろう。黙って小さく首を振るのが精一杯といった真理愛に、圭亮は喉の奥で笑って絵本を机の上に戻した。そのままベッドに潜り込む。
「じゃあ寝ような。おやすみ、真理愛」
「……」
こく、と微かに頷く真理愛の肩までしっかりと布団を掛け直し、その上からポンポンと軽くリズムを付けて叩いていると、娘はあっという間に眠りに落ちて行った。
しばらく寝息を確かめてから、圭亮はベッドを揺らさないようにそっと起き上がる。さすがに寝るにはまだ早い時間だ。
部屋を出ようとドアを開けて、眠る娘を振り返った。
……今夜は悪夢を見ないで済むといい。幼い娘の悲鳴は、圭亮にとっては身を割かれるほどの苦痛だった。
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