Goodnight~良い夢を~

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 娘を引き取った際に買い替えた、セミダブルのベッド。  奥の壁際に真理愛(まりあ)を寝かせて、その身体の上に布団を掛けてやる。何か言いたげな娘の視線を辿れば、机の上に置いた絵本。 「真理愛、絵本か? どれがいい? ウサギさんか、お星さまか、お姫さまか、あとはえっと──」 「……おほししゃま」  圭亮(けいすけ)の父が最初に買って来た、真理愛のお気に入りの絵本だ。 「お星さまな、わかった」  机に手を伸ばして絵本を取ると、圭亮はベッドに腰掛けた。  横たわる真理愛に見えるように絵本を開いて、申し訳程度に散りばめられた文字を読んで行く。  できるだけゆったりとページを捲り、読み終えてもしばらく最後のページを開いたまま待った。  最初の頃は、自分のペースで次々読み進めていたのだ。何が目的で読んでいるのかも、今思えば理解できていなかった。  ……この年になって絵本を手にするとは。しかも娘のために読み聞かせる日が来るなどと、想像したことすらなかったのに。  何も知らず気楽な独身生活を満喫していた己が、ほんの僅かずつでも『親』に近づいているのを感じた。
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