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彼は真意を確かめるように私の顔を見て、それから前を向いて、考える表情を浮かべる。
「……あたし、そこまでお人よしじゃないよ」
「じゃあ、僕に好意でもあったんですか?」
「は!?」
「違うんですか?」
極端。
「……いや、あのねえ」
言いかけたその時、空が光ったかと思うと、数秒遅れて物凄い音が響いた。
「――――っ!」
思わず耳を塞いでその場に凍りついた私を、彼は驚いたように覗き込む。
「……大丈夫ですか?」
「……あの、前に近所に落ちて。ちょっと……」
これ、電車動いてるんだろうか。
いや、普通に動いてたとしても怖い。
家の最寄りまでたどり着けたとしても、これじゃ外歩けないし母はまだパートから帰ってないから車で迎えに来てもらうわけにも……。
「先輩」
「ん……?」
「もし嫌じゃなかったら、うち来ますか?雨宿り程度に」
「え?」
駅の近くの白い新築アパート。
前に一緒に帰った時に教えてもらって場所は知ってるけど、さすがに行ったことはなかった。
「……いいの?」
「人が来ることなんてほとんど無いので多少散らかってますけど。その様子見たら傘貸すだけじゃ心配です」
前を向いたまま、ぶっきらぼうに彼は言った。
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