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「ほとんど人は来ないので、ほぼ自分の好きなものしか置いていなくて」
「……ってことは、たまには誰か来るの?お友達とか」
「弟が来ます」
苦笑い、というには嬉しそうな顔で彼は言った。
「五つ下で、お母さんが違うっていう?」
「中3なんですけど、思春期のせいか性格なのか、学校や親ともいろいろあるみたいで、時々塾に行くのをさぼってその時間でここに来るんです」
「……へえ」
「大して話をするわけでもないですけど、お茶を飲んで、僕が作った簡単な食事を食べて帰るだけで気が済むみたいで」
「……そっか」
ふと我に返ったように、彼は真顔に戻る。
「すみません。そんな話興味ないですよね」
「ううん。むしろ、安心した」
「え?」
「前に、……ほら、夏休み、実家に帰るのか聞いたら、何か事情があるみたいだったから。でも弟さんは仲いいなら良かったと思って」
バイトもしないで、親にこんなアパート用意してもらってお金の心配なくて、っていうのは恵まれてるけど、でも、これが彼の持ち物全部ということは、卒業してからも帰る予定はないってことなんだろう。
うちは、お金はキツキツだけど家族は仲いいし、父と母が私の持ち物ごと外に放り出して帰らせてくれない、会いにも来てくれない、ということは考えられない。
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