雷鳴

13/19

101人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「ほとんど人は来ないので、ほぼ自分の好きなものしか置いていなくて」 「……ってことは、たまには誰か来るの?お友達とか」 「弟が来ます」  苦笑い、というには嬉しそうな顔で彼は言った。 「五つ下で、お母さんが違うっていう?」 「中3なんですけど、思春期のせいか性格なのか、学校や親ともいろいろあるみたいで、時々塾に行くのをさぼってその時間でここに来るんです」 「……へえ」 「大して話をするわけでもないですけど、お茶を飲んで、僕が作った簡単な食事を食べて帰るだけで気が済むみたいで」 「……そっか」  ふと我に返ったように、彼は真顔に戻る。 「すみません。そんな話興味ないですよね」 「ううん。むしろ、安心した」 「え?」 「前に、……ほら、夏休み、実家に帰るのか聞いたら、何か事情があるみたいだったから。でも弟さんは仲いいなら良かったと思って」  バイトもしないで、親にこんなアパート用意してもらってお金の心配なくて、っていうのは恵まれてるけど、でも、これが彼の持ち物全部ということは、卒業してからも帰る予定はないってことなんだろう。  うちは、お金はキツキツだけど家族は仲いいし、父と母が私の持ち物ごと外に放り出して帰らせてくれない、会いにも来てくれない、ということは考えられない。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加