雷鳴

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「え」  確かに、初めて来た後輩のしかも男の子の家だっていうのに、いろいろご馳走になってしまったけども――――。  遠慮無さ過ぎただろうかと顔が熱くなる。 「別に嫌味じゃありません。むしろ遠慮される方が鬱陶しいです。……じゃあ、行きますか。駅まで送りますから」 「いや、いいよ。もう。駅すぐだし。道も分かるし」 「……それもそうですね」  彼は私のコートだけを取って、手渡す。  低い声に、何か悪いことを言ってしまったかと思った。  でも、分かり切った道を、わざわざ雨の中送ってもらうのは気が引ける。  身支度をして窓の外を見ると、ここに来た時よりだいぶ明るくなっていた。 「これなら、大丈夫そう」 「良かったですね」 「ありがとう。お邪魔しました」 「……いえ」 「あ、傘は、返す時は」 「……別に、いつでも」  って、また来るってことなのかな……いや、でも付き合ってるわけでもないし、あんまり来るのは。 「……じゃあ」 「はい」  玄関に向かおうとした時 「先輩」 「ん?」 「……まだ、雷鳴ってますから、もう少し居てもらっても大丈夫ですよ」 彼が言った。
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