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「え?あ、はい。じゃあ今すぐ」
いきなり離されると本気で倒れそうになって、慌てて彼が抱き止めた。
「先輩?……すいません。僕、何か」
彼の肩を枕に、私は溜息をついた。
「……謝る前に、言うことあるんじゃない……?」
「え?」
「だから、……蓮見君は誰にでも、家に来た人を引き留めて、潰れそうなほど抱いたりする?」
「するわけ無いでしょう」
「……じゃあ、どうして?」
視線を揺らがせて、彼は考える。
「……あの」
「うん」
「思い当たることはあるんですが、まだ確証が無いので、もう少しそれは待ってもらえますか」
「……は?」
「いや、なんとなく何を言わせたいのか、何を言うべきなのかは分かりますが、――――今のは突発的なあれで、自分でも……まだ、そう言っていいのかどうか分からないので」
分からないと言う割に、彼は頬を赤らめる。
『アンバランスというか、どこか幼い感じがあって。その年代の男の子が考える、好きだから話しかける、っていうのと、ちょっと違う気がする――――』
自分で言ったことだけど、ああ、ほんとにこの子、そうなんだ……と納得した。
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