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告白
「あ、蓮見君!」
休み時間の移動途中、珍しく彼女から声を掛けられた。
「今、大丈夫?」
「はい」
同じ学年の連中がちらちらと横目に見ていくのも、最初の頃は気になったが今はもう慣れた。
「おかげさまで卒論、今日出してきた」
「そうですか。良かったですね。お疲れさまでした」
「本当にさ。腕おかしくなるかと思った」
と、彼女が振って見せた右手の袖口からは白い湿布が覗いていた。
最後の頃は腱鞘炎気味で大変だったと聞いてはいたけれど。
「これでやっと楽になるわー……って、それはいいんだけど。来週、どうする?」
「来週?」
「誕生日」
――――あ。
「……覚えてたんですか」
「そりゃ、印象強かったからね。日にち的にも、蓮見君の反応的にも」
と彼女は笑う。
誕生日を聞かれたのは、確か6月。
休講で空いた時間に学食へ行ったら彼女がテーブルに突っ伏して寝ていて、何事かと思ったら前日がゼミの飲み会で二日酔いだったとかで。
「そっかー。蓮見君まだ未成年か。飲まない方がいいよ」
「じゃあ、なんで二日酔いになるほど飲むんですか?」
「付き合いというか……うちの先生も飲むの好きだし、ついその場の雰囲気で……」
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