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まだ気分が悪いのか、それとも単に罰が悪いのか、俯き加減でぼそぼそと話していた彼女が、ふと気づいたように顔を上げた。
「誕生日いつ?」
「……僕ですか?」
「うん」
「……12月ですけど」
そこでよほど顔に出ていたのか、彼女は少し笑って言った。
「もしかして、クリスマス?」
「……なんで分かるんですか」
「どっち?イブの方?」
「そっちの方です。……そんな日が誕生日なだけで十分悪趣味なのに、聖人と同じなんて言ったら嫌がらせです」
彼女はきょとんとして、それから笑った。
「そうねえ。誕生日がその辺の人って、クリスマスプレゼントと誕生日プレゼント、一緒にされちゃうみたいだしね」
「そういうことじゃ」
言いかけて、やめた。
まだ、家の事情なんて話していなかった頃のことだ。
誰がプレゼントをくれるわけでも、祝ってくれるわけでもない。
そんな自分が、世界中が浮かれているような日に生を受けたというのは、神様というものの悪い冗談にしか思えなかった。
彼女は、そんな僕の心中は分からなかっただろうけれど、少し考えて言った。
「じゃあ、その時になったら一緒に飲み行こうか」
「いや、さっき飲まない方がいいって言ったじゃないですか」
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