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あれから、彼女もあの日僕が言わなかったことを追及することはなく、僕も触れていなかった。
それで家に来て欲しいというのは図々しく甘え過ぎたかと思ったけれど、彼女は笑って言った。
「いいよ。分かった。じゃあ……バイト先のケーキでも買ってくから。休んどいて嫌がらせかって怒られそうだけど」
「それくらい僕が」
「誕生日でしょ。いいよ。あ、それじゃまた連絡するから。苦手なものとかあったら教えて」
そう彼女は言って、そそくさと、という表現がぴったり来るような足取りで急ぎ足に階段を上がって行った。
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