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けれど、彼女はそんなことは気にならないような顔でこっちを見る。
「ねえ、これとこれ気になるんだけど、蓮見君はどっちが好き?」
「……僕の好みでいいんですか?」
「うん。飲んだことある人に聞くのが一番いいじゃない」
何だか、楽しそうだ。
「それなら……」
歩み寄って一緒にテーブルを見下ろすと、ふわりと彼女から甘い匂いがした。
香水のような人工的なものじゃなく、体温で自然に立ち上ったような柔らかな匂い。
この間は、余裕がなくて気づかなかったのかもしれない。
「どうかした?」
見上げられて焦った。
「いえ。……ケーキと一緒なら、こっちのカモミールの方がすっきりしていいかもしれないです。こっちはベリー系なので甘みがあるから」
「……ブルーベリーとフルーツのタルトも買ったけど、それと合わせたら味かぶるかな?」
「じゃあ、ケーキを先に決めますか?」
冷蔵庫にしまってあった箱を取り出して開けると、三種類のケーキがひとつずつ入っていた。
「先輩、先にどうぞ」
「何言ってんの。あたしはバイト先だしいつでも食べられるから。主役が選びなさいよ」
「主役?」
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